Korin's Art. / 『光琳アート』展 @MOA美術館。

MOA美術館で開催中の『光琳アート』展に行ってきました。




国宝の 《燕子花》 と 《紅白梅》 の屏風が同じ部屋に対になって展示される…という壮大な企画です。

しかも、同時展示自体56年ぶり。
当時の皇太子(現・天皇陛下)の婚礼を記念しての展示以来とのことでした。


尾形光琳(1658-1716)は江戸時代の芸術家です。


光琳は本阿弥光悦俵屋宗達らの表現をさらに洗練させ、彼らの表現はのちに“琳派”と呼ばれるグループになります。光琳の作品たちはその “琳派” の最高傑作をも言われています。

今回の展示は、江戸時代期の名作からはじめ、その影響を今日の現代アートにも見出そう…という壮大なストーリーです。

琳派はもちろん、光琳についてもよく知らず熱海まで行きましたが、特別セミナーで基本情報と展示の見どころのレクチャーを受け、琳派偏差値を55くらいまで上げることに成功しました。


via wikipedia

5000円札の裏面。左には《燕子花》の一部が!

表は樋口一葉さんのアレです。
個人的に、構図もアレだし、ちょっと盛り込みすぎでは…?とおもいますが、こんな身近なところにも光琳がいます。



国宝 《紅白梅図屛風》。


白梅はほぼ画面の外でかなりまがって描かれているのに対し、紅梅は収まっている、直立。
真ん中に流れる川は、緩やかに時間の存在を感じさせてくれます。


国宝 《燕子花図屛風》
もともと、『伊勢物語』の第九段の八橋を主題した作品です。
ただ、肝心(?)の橋は消え、物語を印象づける燕子花の群生だけが描かれています。


これらの作品がソース(基)となり、

福田平八郎の 《漣》 (←サザナミ、と読むようです。)や、森口邦彦の三越のショッピングバッグ、
会田誠の 《群娘図’97》 など…

にも光琳の構図・表現方法の影響がみられます。


《漣》 はあたまで考えたものではなく、自然なはたらきを、
《白地位相割付文 実り》 (←しろじいそうわりつけもん みのり、と読むようです。)はリンゴというモチーフを友禅という伝統的な染物のなかにグラフィカルに描かれ、
《群娘図》 では現代の風俗をあらわす“娘”たちを“燕子花”に見立てて。

これぞ、ウンベルト・エーコのいう、 「Opera aperta (開かれた作品、開かれた仕事)だ…」
と、学生のころ得た言葉を思い出しました。


ポスターになったカキツバタ。

戦後日本を代表するグラフィックアーティスト、田中光一



直に見るとあでやかでとても優美。


写真を芸術に高めたといわれているフォトグラファーの杉本博司も近年光琳をなぞるような作品を生み出しています。
きらめく金、紅白の美しく優しい色合いなど、色彩の一切を排除した 《月下紅白梅図》 。
こちらの作品は、逆説的に、一連の作品のなかでももっとも光琳の素晴らしさが伝わったような気がします。


「日本美術」って見るもの見るものどれも同じに見えてツマラナイなぁと興味の蓋を閉じていましたが、この同じものに見えるということが意外と面白いことだったということをその後思い知ります。 
既視感のようなことがいけないものだと思っていましたが、その既視感に歴史的な厚みの味わいがあることに気づいた時に少し面白く思うようになってきました。


最近よく読んでいるコラム、集英社のポータルサイト内 【日刊ハピプラアート】 の 「モギ先生と僕 アートの交差点」 に合点。


現代までつむがれ続ける“美”の系譜。

日本独自の“美”、技術、そして現代性を一気に目撃できる貴重な体験でした。

これは本当におすすめ!


■光琳アート
2015年2月4日(水)~3月3日(火)
MOA美術館
静岡県熱海市桃山町26-2


【参考】

ハピプラアート コラム 「モギ先生と僕 アートの交差点」
執筆者の植田工さんは、脳科学者・茂木健一郎氏に師事しながらアーティスト・アートディレクターとして活動するインテリ。
もともとアニメーターになりたくて美大を目指していただけのことはある “ゆるーい” 挿絵も心をつかんで離しません。

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